歯科は歯や歯と関連する組織に関する疾患を治療する診療科のことです。歯科処置の多くは外科行為とされており、一般歯科と矯正歯科、口腔外科、小児歯科を総称して歯科と呼ぶこともります。一般的には歯科医院や歯医者などと呼ばれます。一般的な歯医者では虫歯や歯周病を中心とした口腔内の疾病の治療を行っています。
診療形態の多くは診療所です。開業医だけでなく診療所や病院に勤務する歯科医師も多数存在します。一般的な歯医者での処置は歯肉腫の除去やインプラント埋め込みなどの比較的な簡単な手術を多く扱っています。日本の医療制度では医師と歯科医師で免許が分かれています。
基本的に医師が歯科医業を行うことはできません。治療の内容によって医業と歯科医業の区別がつかない場合もあります。そのような場合には医療行為が歯科医業に該当する場合もありますが、大学病院や総合病院の口腔外科で行われる事例が多数派です。口腔外科では虫歯や歯周病の治療を除いた顎口腔領域の外科処置など、疾病全般を扱います。
口腔外科に従事するのは大半が歯科医師で、医師は少数派です。咬合などの顎口腔機能が歯科と密接な関係があるため、フランス、ドイツなどでは口腔外科の治療を行うために医師と歯医者の両方の資格が必要です。日本では一方の資格で足ります。歯科医は一般的に歯医者や歯科医院などと呼ばれますが、実際には一般歯科、矯正歯科、口腔外科、小児歯科のように治療内容によって専門分野が異なります。
一般的な歯医者で扱っているのは虫歯や歯周病などの口腔内の疾病です。矯正歯科は不正咬合や顎変形症の治療を行います。一方口腔外科では矯正目的以外にも幅広い疾病を対象として治療が行われています。標榜科とは病院や診療所が外部に広告できる診療科名のことで、医療法によって定められています。
矯正歯科も標榜科の1つです。ワイヤーなどによる矯正力で歯を正常な位置に移動させたたり、上顎骨や下顎骨の形態変化を起こし審美性や顎口腔機能の回復・予防を行います。不正咬合は多くの疾患や機能障害を引き起こすため矯正が必要です。日本では一般的な矯正治療に保険が適用されませんが、外科治療が必要な場合には保険が適用されます。
保険制度は生命の維持に必要な治療を行うためのものなので、審美目的には適用されないのが原則です。日本で矯正治療を行うには60万円から120万円の治療費が必要になります。アメリカでは個人の医療保険制度で対応していますが、イギリスやニュージーランドでは学生であれば不正咬合の程度によって無料で矯正治療を受けることができます。口腔外科は顎口腔機能を中心に治療を行っています。
治療内容は外科手術だけでなく内科的な処置やストレス障害など広範囲にわたります。対応している疾病も炎症や外傷、腫瘍、アレルギー、神経疾患、感染症、奇形など様々です。口腔内から頭頸部、顔面まで様々な疾病を行っています。口腔外科と医業との間には診療領域を巡る問題がありますが、厚生労働省の審議会において申し合わせが行われています。
この申し合わせは法的拘束力はありませんが医師と歯科医師の両方に遵守が求められます。まず口腔外科の診療領域としては原則として口唇、頬粘膜、上下歯槽、舌前の3分の2、口腔底、軟口蓋、顎骨、唾液腺とされます。顎骨は顎関節を含みますが唾液腺は耳下腺を除きます。口腔外科の診療対象は口腔内の歯に関する疾患です。
悪性腫瘍の治療や口腔領域外の組織を使用した口腔部分への移植、その他にも全身を対象とした管理が必要な患者の治療には医師と密接な連携をとることが求められます。ヨーロッパやアメリカでは医師と歯医者のダブルライセンスが求められますが、日本ではどちらか一方を保有していれば治療を行うことができます。口腔外科の治療は医業とも重なる部分が多いため、医師と連携しながら治療を行うことが必要とされています。歯医者には一般的な虫歯や歯周病などを扱う医院の他にも小児を専門に治療する小児歯科が存在します。
小児歯科も標榜科の1つで、一般成人に至るまでの患者を担当する歯医者のことです。医院によっては18歳までを治療対象とする場合や、20歳を超える患者を診察する場合もあります。小児を専門とする歯医者では成長発育に関する知識が重要となりますが、保護者への指導なども必要とされます。そのためコミュニケーションや行動科学が重視されることになります。
行動科学とは人間の行動を科学的に研究して法則性を解明する学問です。心理学や社会学、精神医学などが該当します。社会科学は社会システムの分析を行いますが、行動科学では社会における個体間のコミュニケーションや意思決定メカニズムなどが重視されます。小児を専門に扱う歯科では治療対象となる患者だけでなく、両親とのコミュニケーションが非常に重要となります。
基本的な生活態度に内在する問題を解決することで、様々な疾病が発生することを未然に防止できます。小児を専門とする歯科医師にはコミュニケーション能力が必要とされており、大学病院などでは一般的な小児科とも連携する事例が多く見られます。一般的な歯科医院に勤務する歯科医師の仕事内容としては、患者の歯の治療や口腔内疾患の予防などを挙げることができます。虫歯や歯周病、その他の歯や歯茎に関する疾患の治療、歯石の除去や親知らずの抜歯、入れ歯や義歯の作成などが主な仕事です。
歯医者の仕事は歯の直接的な治療だけではありません。口腔内や舌に関する疾病全般や顎に関する疾病の治療も歯医者の重要な仕事とされます。口腔内にも腫瘍や癌などが発生する場合があります。問題の早期発見は歯医者の重要な役割です。
小児を専門に治療を行う医院では歯並びや顎の骨の状態を確認し、場合によっては歯列矯正などを行います。審美性を専門に扱う医院では歯並びやホワイトニングなど歯を美しく見せたいという患者の要望に対応します。近年ではインプラント治療を専門的に行う医院も増えています。インプラントとは体内に埋め込まれる器具の総称です。
医療目的で様々な器具が体内に埋め込まれることがあり、特に失われた歯根の代わりに顎骨に埋め込む人工歯根のことをデンタルインプラントと呼びます。インプラントは天然の歯に近い機能と形態の回復が得られる可能性がある一方で、周囲の歯を削ったり負担をかけずに済むため人気があります。近年では多くの患者がブリッジや有床義歯ではなくインプラントを選択しています。歯科医師が開業するためには、歯に関する治療技術だけでなく歯科医院を運営する経営能力が必要です。
近年では欠損歯の問題を解決する方法としてインプラントを選択する人が増えており、また治療を行う医院の数も増加しています。インプラントは基本的に審美目的とされるため保険が適用されません。1本あたりの価格は30万円から45万円とされます。しかし自分の歯と同じように使用でき、仕上がりも自然なことから人気があります。
医院の経営を効率的に行うならばインプラント治療を積極的に行うのも1つの方法です。効率的に歯科医院を経営するためには従業員を指導する能力や金銭管理能力、消費者の需要を見極める能力などが必要になります。より多くの患者の支持を得ることが運営を成功させる鍵です。大手の総合病院では歯や歯茎の治療だけでなく、喉など様々な部分の治療も行っています。
大学病院や大手の総合病院では舌癌などの手術を行う場合があります。また手術には口腔内だけでなく全身の麻酔が必要になる場合も存在します。全身が治療対象となる場合には医師との連携が必要です。歯医者も歯科医師法の規定により全身麻酔を実施することは可能です。
しかし全身麻酔には高度に専門的な知識や経験が必要になります。全身麻酔を行う歯科医師は歯科麻酔の専門資格を取得するなど知識と技術の向上に努めることが必要です。
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